xmlns:data='http://www.google.com/2005/gml/data' がん治療のお薬・最新研究情報のサイト: 【まとめ】 オブシーボが効く人、効きにくい人 -T細胞の疲弊

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2018年3月7日水曜日

【まとめ】 オブシーボが効く人、効きにくい人 -T細胞の疲弊

免疫チェックポイント阻害剤が実際の治療に使われてはじめて、もう数年がたちます。 

PD-1阻害剤オプシーボが2014年9月キイトルーダは2017年2月。 CTLA-4阻害剤ヤーボイが2015年7月に国内製造販売の承認を受け、免疫チェックポイント阻害剤という言葉もすっかり定着したと思います。

一方で、期待が大きかっただけに、治療実績が進むにつれて「期待したけど、全く効果がなかった。」という方も多くなっているように思います。

そこで、もう一度、オブシーボ、キイトルーダ、ヤーボイの免疫阻害薬がどういう人に効くのかを考えて、更に、これらの治療薬の効果を最大限に引き出す為にはどうしたら良いか考えてみたいと思います。


(目次)

1. 免疫チェックポイント阻害剤とは。

2.免疫チェックポイント阻害剤はどういう人に効果があるのか?

3.免疫阻害剤の治療による盲点(T細胞の疲弊)

4. 免疫細胞を活性化するには


1. 免疫チェックポイント阻害剤とは (復習です。)
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癌細胞には、体内の免疫機構から逃れるための様々な機構をもっています。 例えば、癌細胞の表面に表出するある特定のタンパク質は、免疫細胞(リンパ球など)の表面に表出する特定のタンパク質と結合して、免疫活動を妨げるシグナルを送り、免疫細胞の攻撃を避ける等です。 このタンパク質同士が結合して免疫活動を妨げる機構を構成するシグナル伝達経路は複数あることが分かっています。

代表的なものは、① CTLA-4 (Cytoxic T-cell antigen-4) ② PD-1(Program Death 1) ③TIM3 (T-cell immunoglobulin mucin-3) ④LAG-3 (Lymphocyte activation gene-3 ⑤BTLA (Band T-cell lymphocyte attenuator) などが知られています。

2018年3月現在、①と②の経路を阻害する治療薬が日本や世界で承認されています。

免疫チェックポイント阻害剤は、この免疫抑制のシグナルを伝達する経路を邪魔(阻害)することで、本来の免疫細胞の機能を取り戻し、がん細胞を再び攻撃出来るようにしようとするものです。

① CTLA-4 阻害剤

ブリストル・マイヤーズスクイブ社開発。 米国承認 2011年3月。 日本では2015年7月承認。 根治切除不能な悪性黒色腫の治療に使われています。

がん細胞を破壊するおもな免疫細胞はT細胞です。 T細胞は獲得免疫型と言われ、どの細胞が攻撃対象なのか教えてもらわなければ、対象の細胞を攻撃できません。 T細胞に、その目印(抗原)を教えてあげるのが樹状細胞です。まず樹状細胞ががん細胞を捕食し、がん細胞の抗原を把握します。 

そして、その目印である抗原を学習し細胞表面に提示すると、攻撃役の細胞であるT細胞は抗原を認識し、さらに樹状細胞のB7という分子とT細胞のCD28という分子が結合すると、T細胞は活性化してがん細胞への攻撃を開始します。

ところが、T細胞が活性化すると表面にCTLA-4という分子が発現します。これが樹状細胞のB7と結合するとT細胞の働きが抑制され、T細胞はがんを攻撃しなくなります。そこで、抗CTLA-4抗体は、T細胞上のCTLA-4と結合することで、樹状細胞のB7とT細胞上のCTLA-4が結合するのを阻害し、T細胞の働きが抑えられるのを防ぎます。 この抗CTLA-4抗体として承認されている治療薬がイピリムマブ (ipilimumab : ヤーボイ)です。


② PD-1/ PD-L1(PD-L2)阻害剤

上記の過程でがん細胞のターゲット(抗原)を認識したT細胞はがん細胞を攻撃しはじめます。 がん腫瘍が小さいうちは、それで死滅させることができますが、がんが増殖してくると、がん細胞は、再び免疫から逃れる機構を働かせ始めます。

がん細胞の攻撃を開始した(活性化した)T細胞の表面にはPD-1という分子が発現し、増殖した腫瘍のがん細胞にはPD-L1やPD-L2というたんぱく質が発現します。 このPD-1とPD-L1/PD-L2が結合すると、がん細胞がT細胞に免疫抑制シグナルを送り、攻撃が抑えられてしまいます。


このPD-1/ PD-L1(PD-L2)の経路を邪魔するために、PD-1に結合する治療薬が、ニボルマブ (Nivolumab: オプシーボ) ぺムブロリズマブ(Pembrolizumab: キイトルーダ)です。 

アテゾリズマブ (Atezolizumab:テセントリンク) は、PD-L1側に結合することで経路を阻害しますが、PD-1に結合することと、PD-L1に結合することによる臨床上の効果の違いは大きくないという認識がされはじめています。

*PD-1阻害剤とCTLA-4阻害剤が別のシグナル経路を阻害することが理解されると、では両剤を併用で服用した方が効果的では?と疑問に持たれる方もいるのでは? その疑問は正しいです。 そして両剤併用の臨床試験も行われましたが、その結果は、副作用の大きさの評価が分かれるとことです。 それは、別稿にて。


2. 免疫チェックポイント阻害剤はどういう人に効果があるのか?
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これについては、新薬の承認を得るときに提出される治験の結果が参考になります。

◆オブシーボの場合、

1) 悪性黒色腫患者を対象とした 国内第Ⅱ相試験(ONO-4538-02 試験)

化学療法による治療歴を有する根治切除不能なⅢ期/Ⅳ期又は再発の悪性黒色腫患者35例、奏効率:22.9%(90%信頼区間:13.4~36.2%)

2)非小細胞肺癌患者を対象とした国内第Ⅱ相試験(ONO-4538-05試験)9)

プラチナ製剤を含む化学療法歴を有する切除不能なⅢB期/Ⅳ期又は再発の扁平上皮非小細胞肺癌患者(ECOG Performance Status 0及び1)35例に対し、奏効率: 25 . 7%(95%信頼区間:14.2~42.1%)

という結果が報告されています。

興味深いのは、オブシーボの治験に際しては、効果が出やすいと想定されるPD-1、またはPD-L1の発現率を治験患者の選定条件に加えていないことです。


◆キイトルーダの場合、

一方、キイトルーダでは、転移性非小細胞肺に対する治験(KEYNOTE-024)では、腫瘍細胞の50%以上がPD-L1を発現していることを条件とし、奏効率、57.1%(95%Cl 34.0‐78.2%)という高いレスポンス率を達成しました。(比較対象の科学治療郡の奏効率は21.1%(95%Cl 6.1‐45.6%))


これは、オブシーボより遅れて開発されたキイトルーダが、第一選択薬のポジションをオブシーボに先駆けてとる為に、効果が確実に見込めるようなPD-L1の発現率の高いハードルを治験参加者の条件に設定する治験の計画をデザインした為と言われています。

従って、当たり前の結論に見えるかもしれませんが、オブシーボも、PD-L1の発現率が高い腫瘍だと効果が出やすいと推定されます。


3. 免疫阻害剤の治療による盲点(T細胞の疲弊)
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ところで、このT細胞は長く、がん細胞に晒されていると、PD-1が過剰発現して疲労してしまい、T細胞本来のがん細胞破壊機能が果たせなくなることが知られています。

この現象をT細胞の疲弊といいます。

このように疲弊したT細胞を体外で培養しても、生体内に戻しても増殖能力やがんを攻撃する能力が弱く、高い治療効果を期待できないと指摘されています。


そこで、疲弊した細胞の若返り(未感作状態に)するための研究が進められています。

1つは、山中教授のiPS細胞からT細胞を分化させる方法があります。 

慶応大学と武田薬品は、別の方法でPD-1などのチェックポイントとなるタンパク質が発現していないT細胞を作る研究が進められています。(報道発表は、こちら。https://www.amed.go.jp/news/release_20170522.html)。

岡山大学では、糖尿病治療薬のメトホルミンがT細胞を疲弊から回復される可能性が高いという研究成果を発表し、臨床試験が待たれるとことです。(http://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id269.html


オプシーボの生みの親である京都大学では、低分子化合物を用いて、キラーT細胞内のミトコンドリア由来エネルギーを増大させ、T細胞の増殖・活性化させ、腫瘍抑制効果を増強する研究をしています。2017年1月発表 http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2016/170117_1.html


これらのことから、

◆◆◆オプシーボによる治療効果が見込めるのは、同じがん腫瘍であれば、◆◆◆
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(2つの観点)

1) がん腫瘍を構成しているがん細胞に、PD-L1の過剰発現のあるがん細胞が多くある場合

2) T細胞にPD-1が過剰に発現しておらず、疲弊していないT細胞が多くあること。
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になるかと思います。


1)については、放射線治療が、がん細胞にPD-L1の発現を促進するとされています。従って、放射線治療と合わせた免疫チェックポイント阻害剤による治療が有効である可能性が指摘されています。(群馬大学の研究発表の概要参照:http://www.gunma-u.ac.jp/wp-content/uploads/2017/12/291220press.pdf。)


2) については、がん治療の(T細胞が疲弊していない)早い段階でのオブシーボの服用、疲弊していないT細胞を作る為の技術、薬の開発・臨床試験を経た治療方法の確立が待たれるということになるかと思います。 


以下、2)の点について考察します。


以上が、エビデンス・ベースの議論になります。
****以下は、記述は証明できるエビデンスはありません。個人の考え方です。*****


4. 免疫チェックポイント阻害剤の効果を引き出すためにはどうしたらよいか?
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繰り返しになりますが、エビデンス・ベースの治療方法が確立するのを待てるのであれば、「3. 免疫阻害剤の治療による盲点」で記載したような疲弊していないT細胞を作り出す技術が、大学などの研究が臨床試験を経て、標準治療になるのを待つのが一番、確実だとは思います。

しかし、現在、闘病中、又は、経過観察中の患者さんは、そんなに待てないのではないでしょうか?

であれば、個人の努力で免疫力の向上をしておくことは重要ではないでしょうか?

エビデンスがまとまるまで何もしない、という事が正解ということにはならないでしょう。

「免疫チェックポイント阻害剤の効果を引き出すためにはどうしたらよいか?」という命題は、「健康なT細胞を増やす為には、どうしたらよいか?」という問いに繋がると思います。


既に、このブログを読んでいる方は、既にネット検索をして「免疫力を向上する」、という情報があまりに多いことに圧倒されているのではないでしょうか?

免疫力向上や免疫細胞の増殖をうたう民間療法は、エビデンスが提示されていない限り、個人的にはお勧めはしません。(お金も高いですし。)

ご興味がある方は、ご自身で直接、ご確認ください。


一方で、「免疫力をあげるのに役立つ」とされる代表的な方法は、

*体温を1度あげる。
*ストレスから解放される。
*腸内環境を整える。
*食事療法で基礎的な体質の改善を図る。

というところでしょうか?


食事療法というと、

*冬虫夏草がよい
*(春)ウコンがよい
*パイナップルがよい 等

「○○は免疫力向上、抗がん作用があるので食べた方がよい」というものから、

「抗癌剤が不要になる食事療法」として有名な以下の方法もあります。

① 『ゲルソン療法』
② 『済陽高穂式 食事療法』
③ 『ケトン食療法』

これらの食事療法に対する評価については、大場医師の指摘に譲ることとします。
(詳細はコチラ


いろいろありますが、もし一冊だけご紹介するのであれば、京都大学名誉教授 和田洋巳の食事方法に関する本でしょうか。第一線でがん治療に活躍された実践的ノウハウが詰まったこの本は、闘病生活には大変参考になる本です。(それに、料理関係に関しては、ご本人も「美味しさ」にも拘っていると言われており、その点も嬉しい。)

 


最後に、このブログらしく。

Vitamin Dが、全ての免疫細胞(T細胞、B細胞, マクロファージ、樹状細胞等)を活性化することは科学的に確認されています。(Vitamin D and the Immune System:2011/Aug.  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3166406/

どうしても免疫活性化をいうときに、もっとVitamin Dの大切さを強調しないのか不思議です。
(まあ、ビタミンDを摂ろう、と言ってもストーリー的に地味ですからね。)


折角、免疫抑制機構を阻害して、T細胞ががん細胞を攻撃できるようになっても、肝心のT細胞が疲弊していては、充分にがん細胞を攻撃できませんから、これからオプシーボ、というか

免疫チェックポイント阻害剤を使われて治療される方は、

是非、免疫力を向上させて(T細胞を活性化状態にして)、治療薬の効果を最大限に引き出せるとよいですね。

なお、免疫力を向上させる方法については他にもあるかと思います。
皆さんの体験談などがあれば、コメントをお待ちしております。

**追記
3月8日、 血液中のビタミンDの濃度が低いとがんになるリスクが高くなることがわかったと、国立がん研究センターのチームが8日、英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルに論文を発表しました。 このブログの1日後です。 ビタミンンDが大切と、この発表以前にもお伝えできたのは、少し、嬉しいところです。

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